チリル式レギュレータ―の回路図と動作原理

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W3のレギュレーターはメグロの時代からのチリル式だ。

名前自体は以前から知っていたが、特段の関心はなかった。しかし、このレギュレーターを付けている限り、密封式のバッテリーに交換することはできない。まあそれでもいいと思っていたのだが、姫路の松居さんがwebでチリル式→IC式に交換して、ロスのない制圧制御を実現されているのを見て、面白そうだなあと興味を持った。

 

さて、まずはW3から現物を取り外せば構造は分かるのだが、外してしまうと乗れなくなるのでヤフオクにて安いものを入手した。W1S用らしいが、Wシリーズだから同じだろうと思い、1100円にて落札。自宅に届いた直後にカバーを外し内部構造を確認し、昔の自動車電装部品の教科書を片手に理屈を紐解こうと、連休ボケの頭をひねること一日。できましたよ。回路図!ということで、まずはこれを。

 

こんな感じでしょうかね。

なるほど昔の人はうまいこと考えたものです。ダイオードが無い時代にこうやってダイナモを制御していたんですね。

さて、動作原理。

 

まずエンジンが止まっている状態では上の回路図のようになっている。あ、一応、回路図の基礎として、e点~f点とb点~c点はリレーが無励磁時に解放、励磁辞に接点が構成される、一般的にA接と呼ばれるもの。c点~d点はリレーが無励磁時に構成、励磁時に解放される、一般的にB接と呼ばれるものだ。更に、レギュレーターの機能の面からb~d点は低速接点、b~c点を高速接点と呼ばれている。

 

手前左下がF端子。絶縁板を介して手前側のリレー固定部につながっており、それがb点まで導通する構造になっている。つまりF端子とb点は同電位ということ。リレーが無励磁時はd点と接触している。励磁すると接極子がコイルに引きつけられるためb点の下側の接触子が右側に動きc点と接する。

 

さて、エンジンが回転しダイナモの回転数が上昇し、A端子電圧がカットイン電圧(バッテリー電圧を上回る値にセッティングされている)に達すると、カットアウトリレーが励磁してA端子はコイルを経由してB端子と導通することによりバッテリーへの充電が開始される。このときはボルテージレギュレーターリレーはまだ励磁に達していないので、b点はd点と接している。つまり、F端子はG端子に短絡されている状態。レギュレーター裏側の抵抗体を短絡しているということ。

よって、アマチュアから適切な電圧が出力されバッテリーへの充電が開始される。

a点は大変見ずらいところにある。現物では二つのリレーの間。カットアウトリレーの接極子の裏側に半田付けされている。このa点からは二つのリレーの電圧コイル(図で黒のコイル)への電力が供給される。RbとRcの合成抵抗は32.5Ω(実測値)である。

カットアウトリレーの接点。

コイルは図で黒の電圧コイルと赤の電流コイルが二重になっている。このリレーの電流コイルの機能は教科書には言及されていないので定かではないのだが、多分、アマチュアからバッテリーへの突入電流を防止するために介在させたリアクトルではないかと思う。

 

一方、レギュレーターリレーの赤の電流コイルは、カレントリミッターコイルといって、バッテリー電圧が低すぎて充電電流が増加した時にダイナモが焼損することを防ぐために電流値が一定値を超えるとダイナモの発電を抑制するためのものである。教科書によるとこのコイルは独立しているものもあるらしいが、Wについてはレギュレーターコイルと二個一になっている。ここらはうまいこと設計したんだなと感心する。

 

電流コイルの電線は太く抵抗が小さい。r1+r2=0.1Ω程度である。

 

 

さて、本題に戻そう。

 

ダイナモの回転数がそこから更に上がると、レギュレーターコイルが励磁するもののコイルの吸引力が弱くb~c点が構成されるには至らずかつb~d点が解放されるという中間位置に到る。つまりb点がどのc点にもd点にもつながらない状態。このときF端子は抵抗体を通じてG端子に導通している。

左側の抵抗体。これはG端子とF端子につながるもの。ボルテージレギュレーター兼カレントリミッターリレーが動作して低速接点が解放されるも高速接点構成には至らない回転域、つまりb,c,d点のどれもつながっていない状態の時に、ここに電流が流れて、フィールドコイルのマイナス側が接地される。そのため、ダイナモ内部のフィールドに加えて、写真の抵抗体の抵抗が加わることによりフィールド電流が減少しダイナモの発生電圧が抑制されるという仕組みである。

 

しかし、回転数が一気にあがってしまったりすると、高速接点(b~c点)が構成されるので、F端子はA端子と短絡する。F端子はダイナモ本体のフィールドのマイナス側なので、ここがA端子と短絡するということは、フィールドの両端電圧が同電位になるということ。よって、界磁がなくなるのでダイナモの発生電圧は0となる。

 

そうすると、カットアウトリレーが無励磁となって、A端子からB端子への導通がなくなり、バッテリーへの給電が休止される。また、レギュレーターリレーも無励磁となり、高速接点が解放されて再び低速接点が構成される。つまり、改めてフィールドコイルのマイナス側がG端子に導通することにより、再度ダイナモの発電が開始するのだ。

 

実際には以上のような”営み”が面々と繰り返しなされるという、全くもってけなげに働く部品だ。教科書によると、これらの制圧作用は一秒間に数十回から数百回におよぶらしい。すごい部品だなあと思う。昔の人は、すごいものを考えたものだ。

 

さて、こういう動作原理を理解したうえで、IC式レギュレータへのモディファイを考えてみたい。

 

今日の出勤時、仕事鞄の中から、チリル式レギュレータを取り出し、電車の中で、手袋して触りながらじっくりと眺めるサラリーマンでした。周りの人は、「この人、電機メーカーの人かしら」くらいに思ってくれていたら良いが、あまり視線は感じなかった。ひょっとして、やばい人???

一夜明けて、再び探究。

今日は、昼一の1時間の会議だけ出勤。というか、年休だけどね。

それまでにちょっと昨日のつづき♪

これ

http://www.j-bike.com/rabbit/shopping/item.php?id=16575

で販売されている、12Vダイナモ用ICレギュレータ。価格18000円!

 

見かけは、原付のレギュレーターレクチファイヤそのものだ。

配線図を見てみると、アマチュアとフィールドのプラス側を同一配線で結線している。松居さんのとは違うけど!?  

松居さんの配線ではアマチュアとフィールドの+側を分離したとのこと↓

 

http://blogs.yahoo.co.jp/matuisigekazu/folder/211737.html?m=lc&p=2

 

どうやったのかな~? 

そこで、頂いたのが↓のコメント。

 

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コメント: 2
  • #1

    姫路の松居 (水曜日, 02 5月 2012 12:39)

    すご~い決め細やかに解明できてますね、チリルの動作原理はそれであってると思いますよ
    私なんかそこまで解ってませんよ、適当です、よって理論の裏付けの無い走る実験室です
    それとまず普通ののレギュレターは使えません、フィールドコイルの制御が出来ません
    普通のやつは永久磁石で発電してるので、フィールドコイルじゃないです
    おそらくケースだけ使って中身は別物でしょうねでも回路的には簡単だと思いますよ
    私のは単純ですよAC,DCの違いは有りますが三相交流フィールドコイル方式のICレギュレターが有れば
    いけるのではと思い探して見たら有ったので、単純に回路を同じにしただけです
    改造はダイナモばらすとブラシの所の端子で赤と水色の線が一緒にブラシにつながってます
    それを別々に出しただけです、Wでは簡単に出来ますよ
    自作も詳しい人だと簡単に作れると思います、実際見ましたがセミトラと一緒でも簡単そうな回路でした
    当然私には作れませんよ、その方の作ったフルトラはすばらしい出来でした
    コールドスタートで、対外キック1発で始動、3発までかかるとどこかおかしいそうです
    2000回転で30秒ほどアイドリングさせるとあとはアイドリングしてます
    そのまま回転あげても振動もほとんど無くW特有の後ずさりもありませんでした

  • #2

    まつ (土曜日, 05 5月 2012 02:31)

    松居さん

    ありがとうございました。
    以下に書いている通り、今では理解できたと思っています。多分、昨日以前に私が書いていた質問は、松居さんにとっては意味不明だったかも?! 
    改めて、面白い改造だなあと思いました。

やっと誤解が解けた!

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5/2に姫路の松居さんからコメントを頂き、改めていろいろと考えてみました。いろいろ調べてみましたが、どうも理解が進まない。分かった様で分からない。 なぜ????

 

他のウェブサイトの説明文などを読んでも頭が混乱するばかり。でも、ようやくわかりました。それは・・・

 

フィールドコイル、という言葉の定義が混乱していたのです。

私の頭の中では、フィールドコイルというものはDC電動機・発電機のステーターコイルとしか定義されていませんでした。私は電車関係の仕事をしていますので、職場ではそういう使い方。

しかし、バイクや車の世界では、フィールドコイルという言葉は、私の理解と同じくステーターを指す場合(ダイナモの構造解説時)と、オルタネーターの電磁石のローターのことを指す場合の二種類あるんですね!これが分かってからは、どのサイトの解説を読んでも理解が進むので、本当に気分がすっきり。

 

言葉の定義の混乱は、困りものですね。

ステーターのことを指すのか、ローターのことを指すのか、で全く理解が違ってきますから。

 

ということで、やっと姫路の松居式ICレギュレターを理解できたのです。

 

①アマチュアをオルタネーターでいうところの”フィールドコイル”として位置づける。

②ステーターコイルはDC出力取り出し用コイルとする。

③ ①と②を実現するためにダイナモのアマチュア+側とステーターである”フィールドコイル”+側を分離する。

 

松居さんがおっしゃっている、”普通のレギュレーターは使えません、フィールドコイルの制御ができません”の意味もわかりますね。

 

普通のレギュレーター

 = ローターが永久磁石、ステーターがコイルの交流発電機 というタイプのジェネレーターの制圧用として設計されている

 

これは三相か単相の違いはあるにせよ、AC出力をコントロールするためのもの。このタイプの発電機は常に発電しているため、バッテリー十分充電された場合などは余った電力を熱として放出するなどして制圧されています。この場合、AC、DCの違いがあっても上記②としては機能しますが、①のフィールドコイルの制御ができません。よって使えないということ。この”普通のレギュレーター”は、現在では主流のタイプである”マグネティックロータータイプ(ローターが永久磁石)”と呼ばれる交流発電機で使われているんですね。

CB750FC サービスマニュアル
CB750FC サービスマニュアル

60~70年代には、発電量を確保するためにローターを発電機にした”フイールドコイルタイプ”の交流発電機が多く採用されていました。このタイプの場合、ステーターのフィールドコイルを無加圧にすれば、ローターは発電なしとなり、フィールドコイルを加圧すれば発電します。つまりフィールドコイルへの加圧制御により発電量を変化させることができ、必要な分だけ発電することが可能です。例えば、私が昔乗っていたCB750Fなんてのも、そうですね。ローターからの発電電力を取り出すために、ブラシがついてます。

このタイプの発電機に用いるレギュレーターを用いれば、①と②の両方が可能なんですね。

CB750FCサービスマニュアル
CB750FCサービスマニュアル

これはCB750FCのサービスマニュアルに掲載されているレギュレートレクチファイヤの回路図です。マニュアルを大事にしておくと、思わぬところで役立ちます。

このACジェネレーターのところを、W3のダイナモのステーターに置き換え(三相のうち二相のところにDCを流す。残りの一相分は空き端子となる。)、B~F間を同ローターに置き換えるということです。BF間はレギュレーターによりオンオフが繰り返されています。

 

まとめます。

CB750Fでステーターのフィールドコイルに相当する機能を、W3ではローターにもたせる。ローターの発電コイルに相当する機能を、W3でのステーターにもたせる。

 

さて、アールプロのICレギュレーター。これはアマチュア+側とフィールド(界磁)+側が結線された状態で使われているようです。だから、松居さんのおっしゃる通り、これは”CB750Fで使われているフィールドコイルタイプ”のレギュレーターとは全く別物なんですね。チリル式の動作をIC化させたということなんでしょう。

 

ようやく分かりました。あ~、勉強になりました(^^)

 

ローターを常に加圧=永久磁石として使えばいいんじゃないの?

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とはいうものの、もうひと粘り。

ローターとステーターの+側を分離せず、”普通のレギュレーター”を使うと本当に制圧できないのか?

そうすれば、”普通のレギュレーター”が結線上は使えることになりますよね。

 

調べてみると、”発熱を考慮しないで良いなら可能”なんですよ!

ローターのフィールドコイルに常にDC電源を加圧すると、それは永久磁石と同じになります。そして出力コイルとして使うステーターコイルからの結線を単相全波整流型の”普通のレギュレーター”のAC入力とすれば、余分な電力を発熱させて消費し、三相全波整流型の一相分のAC入力とすれば出力を短絡させて(若干は各素子で発熱させて消費し)電力を発生させないようにすることで、いずれにせよ欲しいだけの電力を取り出すことが可能です。

(参考:http://www002.upp.so-net.ne.jp/riichi/kousaku/regulator/reg.htm

 

しかし!

この マグネティックロータータイプもどきにするためには、ローターのフィルドコイルにずっと電流を流す必要があります。ここが問題なのです。

 

(参考:http://www.j-bike.com/rabbit/faq/faq.php?id=4038&PHPSESSID=5e7bf530d1bf3c8ef522e5451b08b78d

以下引用~

このやり方ですと、1ヶ月もしないうちに電磁石が焼き切れます!!一般的に言うフィールドコイルの熱による断線です!フィールドコイルは電磁石になったり、解除されたりを繰り返す事により、適当な休息が与えられ、過度な発熱を押さえているんです!それを無視して、電気を流し続け、働らかせ続けると、すぐにパンクしてしまうんです!

 

とのこと。なるほど。だからダメなんですね。

 

とすると・・・・

W3のダイナモの配線を加工して、松居式IC制御にした場合。

 

W3のステーターコイル(ダイナモの構造上の意味でのフィールド(界磁)コイル)が出力専用になりますね。それで、仮にバッテリーへの充電電流が過大になるとどうなるでしょうか。チリル式の場合はカレントリミッターコイルの作用により、フィールド電流を減少させたり界磁コイル両端を短絡させるなどして発電を抑制するように設計されています。これはアマチュアの焼損防止ですね。逆にそうしないとダイナモの宿命としてアマチュアが焼損するわけです。

 

松居式のICレギュレクの場合はどうでしょうか。これはAC発電機に使用されるものなので、カレントリミッター機能がありません。つまり、AC発電機の場合、ローターの回転数の上昇によりステーターのリアクタンスが増加することから電流抑制が働き電流は過大にならない特性があります。よってAC発電機(オルタネーター)にはカレントリミッターがないのです。でも、負荷電流が増えた時には・・・、これはヒューズで対応ということになります。

 

よって、ICレギュレクと負荷の間には必ずヒューズが必要になりますね。

 

 

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コメント: 4
  • #1

    姫路の松居 (土曜日, 05 5月 2012 21:22)

    ひえ~プロの電気技師の方だったとは、素人の流用ですので笑って許してください

    でもア~ルプロのICレギュレターは回路組める人だったら簡単なものなんでしょうね

    なんか作れそうな気がしますが、私は電子工作もできないので無理で~す

  • #2

    まつ (土曜日, 05 5月 2012 23:26)

    いえいえ、電気技師ではありませんよ。
    ちょっとかじったくらいです。今は、電車は弄ってませんから・・・。

    アールプロ製を自作できたら面白そうですね。僕も電子工作はできませんから、無理で~す♪

  • #3

    姫路の松居 (日曜日, 06 5月 2012 21:14)

    CB750F乗ってられたんですね、まさに
    私が流用したのはCB750F用です、回路は不明ですが
    こいつはバッテリーの電圧を監視して、フィールドコイルを通電してるはずです
    直流交流の違いは有りますが、CB750Fと回路を同じにしただけです
    普通は三相交流を入れて直流を出しますが、それに直流を入れてるだけです
    たぶん大丈夫と思いますが、まだまだテスト段階ですよ

  • #4

    まつ (月曜日, 07 5月 2012 08:21)

    なるほど(^-^)/
    CBの部品がつくのは、私的にナイスです。元愛車だけに(^-^)/

    心配なのは、ステーターの耐久性でしょうか。原状と改造後でステーターの平均電流にどれくらい違いがあるんでしょうね。でも、松居さんは大丈夫との見通しのようですね。

CB750F用かCBX400(CBR400F)用か?

2012/5/28 追記

 

CBR400FもCBX400もバッテリーはYB12

CB750FはYB14

W3はYB7

バイクのバッテリーの数字は10時間率容量、つまり10時間何アンペア流し続けることができるかという数値を表示している。

とうことはW3はわずか0.7A。CBX,CBRは1.2A。CB750Fは1.4A。

CB750F用のレギュレクをW3に流用すると、過充電になるのではなかろうか。2倍の容量をもつバッテリーに適した発電コントロールをしているわけだから。よって、レギュレクはCBX、CBR用を用いるのがベターだと思う。

 

ちなみに新電元のレギュレクの品番表記は以下の通り。

http://www.te-motorcyclespares.co.uk/RegulatorRectifierHonda.asp

 

CBX400F、CBR400F用・・・SH236B

CB750FZ,FA用 ・・・SH236

CB750FB,FC用 ・・・SH236A

無番とA番、B番で仕様が若干違うということだろう。

 

姫路の松居さんが、箱根からの帰り道、オーバーチャージかもってことで電解液を補充していたのを見ると、ひょっとしたらCB750F用では電流のコントロールがうまくいっていないのかもしれない。

 

 

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